2022年2月15日、北京冬季五輪スノーボード男子ビッグエア決勝で、最後の試技を前にした蘇翊鳴選手と佐藤康弘コーチ(右、撮影?熊琦)。
今回の北京冬季五輪で中國での知名度を一気に上げた日本人は?と聞かれたら、誰を思い浮かべるだろうか?2月7日にスノーボード男子のスロープスタイルで中國代表の蘇翊鳴選手(當時17歳)が銀メダルを獲得すると、中國ではたちまち彼を指導する日本人の佐藤康弘コーチに注目が集まった。銀メダルを手にし、感極まって何度もハグを交わすこの師弟の姿に、中國の人々は目頭を熱くし、さらに15日のビッグエアで金メダルを獲得すると、その注目度は最高に。また蘇選手だけでなく、スノーボード女子ビッグエアで5位入賞を果たした栄格選手も指導している佐藤コーチに中國との関わりから、2選手との出會い、そして選手の育成について、このほど人民網がオンラインでインタビューを行った。
--中國最年少メダリストとなった蘇翊鳴選手との出會いとは?
最初の出會いはシャオミン(蘇翊鳴選手の愛稱)が11歳の時。中國のスノーボードの大會に大塚健選手を參加させるため同行した際に、中國のホープだと紹介され、その後も彼のスポンサーや両親から僕の指導を受けたいという申し出を受けていた。その後、平昌冬季五輪の際、中國體育総局から中國選手を育成するプロジェクトでヘッドコーチを務めて欲しいという要請を受けたので、その際、僕からシャオミンを必ずそのチームに入れて欲しいというリクエストを出した。
2021年12月5日、スノーボードW杯のビッグエアで優(yōu)勝後、佐藤コーチと肩を組む蘇翊鳴選手(取材対象者提供)。
--佐藤コーチを惹きつけた蘇翊鳴選手の魅力とは?
14歳の時から志が高く、常に自分を成長させるという點にフォーカスしている選手だった。大技の「バックサイド1980」を成功させることは當初からの目標でもあったが、それを目指し続けることができる心の強さというものが、成功の要因になったと思う。志のある選手というのはたくさんいるが、ある一定のところにいくと、少し疲れてしまったり、モチベーションが上がらなくなったりするが、彼の場合、そのモチベーションが底なしに無限大にある。
--女子ビッグエア5位入賞を果たした栄格選手との出會いとは?
中國ナショナルトレーニングチームのヘッドコーチとしてカナダに遠征に行った際、中國國籍でカナダ在住だったソフィー(栄格選手の愛稱)の存在を耳にし、面接を行った上で、女子ならば十分五輪に行けるチャンスはあると判斷した。保護者の同意も得られたので、チームに加えて指導することに。彼女の場合は、怖がらずにアイテムやジャンプに入っていくことができ、失敗してダメージを受けても、立ち上がって次に向かうという強い心をもった選手だと思う。
2022年2月15日、北京冬季五輪スノーボード女子ビッグエア決勝で競技する栄格選手(撮影?熊琦)。
--優(yōu)秀な選手を育てる秘訣とは?
たくさんあるが、やはり人を育てるというところに一番重きを置き、人を見てトレーニングをしている。この場合、レベルは全く関係無く、年齢に応じた身體と脳の発育、そしてコミュニケーション能力など全てを総合的に見ながら、個人にフォーカスした狀態(tài)で、個人がベストを出せるような練習を常に心がけている。その中で単に身體能力の高さだけでなく、內面もしっかり備わり、心が整っているといった素質が全て揃っている選手がやはり上に行きやすい。才能だけあっても無理で、色んな素質が揃っていないと厳しい。そして僕はそれらをきっちりと伸ばしてあげることにこれまで取り組んできた。
2人の教え子を一言で表すなら?という質問に、「シャオミンは可愛い。ソフィーはファイター」と答えた佐藤コーチ。練習中は「僕はとにかく細かい」と言うほど、手の位置や目を動かす位置、あごの角度まで細かく指導するのだという。その一方で、取材時に見せてくれたフランクな人柄は、公開されている動畫などで目にする教え子たちとの英語や日本語、中國語を交えた微笑ましいやり取りを垣間見せ、技術面からだけでなく、選手の內面もしっかり支えた指導が、心の強い選手を育てあげているのだと感じられた。
インタビューの最後に佐藤コーチは、「シャオミンは4年後のイタリア五輪で、今回銀メダルだったスロープスタイルでは金を、そしてビッグエアでは二連覇を目指す長い道のりがまたこれから始まる。彼が望む限り、僕は彼の傍についていようと思っている」とした。佐藤コーチの挑戦はこれからも続く。(文?玄番登史江)
「人民網日本語版」2022年2月21日