日本メディアで最近、なぜノーベル賞級(jí)の科學(xué)者が中國(guó)に行ってしまうのかを問(wèn)う報(bào)道が広く注目されていると聞いている。最近、私もTBSテレビの取材を受けたが、その後の世論での反響についてはフォローしていない。私が以前勤務(wù)していた北海道大學(xué)は日本のトップレベルの大學(xué)だが、研究環(huán)境は良いとは言えなかった。私はずっと日本政府が科學(xué)研究にもっと予算を投じてくれることを望んでいる。これがTBSテレビの取材に応じた理由の一つだ。（上田多門(mén)?深セン大學(xué)特聘教授、日本?土木學(xué)會(huì)2022年度會(huì)長(zhǎng)/環(huán)球時(shí)報(bào)に掲載）

私と中國(guó)との付き合いは非常に長(zhǎng)い。1996年頃、大連理工大學(xué)の一人の教授と知り合う機(jī)會(huì)に恵まれた。その教授の紹介で、2000年に同大學(xué)から北海道大學(xué)に留學(xué)した?jī)?yōu)秀な中國(guó)人留學(xué)生を指導(dǎo)することになった。それ以降、さらに多くの優(yōu)秀な學(xué)生を受け入れた。こうした學(xué)生たちは卒業(yè)後、浙江大學(xué)や香港理工大學(xué)などで教職に就いている。そのおかげで私は中國(guó)の大學(xué)とのつながりを深めることができた。

私は中國(guó)の研究環(huán)境に過(guò)去20年余りで起きた極めて大きな変化を目の當(dāng)たりにしてきた。2011年から、大連理工大學(xué)や浙江大學(xué)、哈爾浜（ハルビン）工業(yè)大學(xué)や深セン大學(xué)などで客員教授となり、1年のうち1-2ヶ月は中國(guó)で勤務(wù)してきた。5年ほど前に、中國(guó)の大學(xué)から専任で來(lái)てほしいと言われたが、その時(shí)はまだ迷いがあった。しかし、2年前に再び中國(guó)に來(lái)た時(shí)には、すでに狀況が変わったとはっきり感じた。

深セン大學(xué)の研究環(huán)境は非常に素晴らしく、日本の大學(xué)が揃えられない先進(jìn)的な設(shè)備があり、周りの研究チームの資質(zhì)も非常に高い。日本國(guó)內(nèi)には今でも先端技術(shù)の中國(guó)流出を懸念する論調(diào)があるが、実際には、少なくとも私がよく知る土木分野においては、研究設(shè)備においても、いくつかの研究分野の成果においても、中國(guó)はすでに日本をリードしている。

いわゆる「技術(shù)流出論」というのは、日本が中國(guó)を誤解しているのだと思う。今や、中國(guó)の大學(xué)が日本の研究者を招聘する目的は、彼らに知識(shí)や技術(shù)を中國(guó)に伝授することを望んでいるからではない。中國(guó)の大學(xué)は世界から優(yōu)秀な人材を招聘しており、その中でたまたま優(yōu)秀な日本の科學(xué)研究者が見(jiàn)つかったということにすぎない。彼らが中國(guó)に來(lái)る理由は様々だが、それは最良の選択をしたら中國(guó)だったということであり、多くの人材が米國(guó)を選ぶのと変わらない。

中國(guó)で土木分野を研究する場(chǎng)合、日本政府が支給するより多くのプロジェクト経費(fèi)をもらうことができ、私が興味を抱いている研究テーマは中國(guó)でのほうが実現(xiàn)しやすい。ということであれば、研究環(huán)境がより良い國(guó)に行きたいのは當(dāng)然の成り行きだ。

2019年に北海道大學(xué)を退職し、深セン大學(xué)の専任になった。中國(guó)語(yǔ)は話せないが、英語(yǔ)で問(wèn)題なく仕事ができる環(huán)境がある。給與は以前より手厚くなり、好きな研究にも打ち込める。中國(guó)に來(lái)る機(jī)會(huì)に恵まれてとても幸運(yùn)だったと感じている。深セン大學(xué)の同僚や元學(xué)生と共同で行っている研究は成果を出し続けており、大學(xué)側(cè)との契約は2024年までとなっている。契約満了時(shí)にまだ一緒に研究ができるのであれば、研究を続けていきたいと思っている。

現(xiàn)在、若手の學(xué)者が日本國(guó)內(nèi)で仕事を見(jiàn)つけるのは難しい。これは日本全體が直面している問(wèn)題だ。日本は博士の學(xué)位を増やす政策をとったが、それと連動(dòng)した研究者の就職先は増えていない。私が勤務(wù)していた北海道大學(xué)のようなトップレベルの大學(xué)でも、専任教師のポストはかえって減っている。多くの若手の日本人學(xué)者にとって、中國(guó)の大學(xué)で働ける機(jī)會(huì)があるのなら、それはとても幸運(yùn)なことだ。中國(guó)の研究者は優(yōu)秀だし、多くの海外人材も研究環(huán)境がより良い中國(guó)に來(lái)ることを望んでいると思われる。中國(guó)での競(jìng)爭(zhēng)は間違いなくさらに激化していくだろう。

実際、研究者だけでなく、中國(guó)でのキャリアアップを目指す各業(yè)界の日本人はますます多くなっている。これは年齢や経歴、職業(yè)とは関係ない。中國(guó)はますます多くの日本人が活躍する舞臺(tái)になりつつある。

中國(guó)人は競(jìng)爭(zhēng)意識(shí)が強(qiáng)く、目標(biāo)達(dá)成のために進(jìn)んで努力し奮闘する。これはいい事だし、今の日本人に足りない部分でもある。しかし、競(jìng)爭(zhēng)を勝ち抜くために、中國(guó)人は「數(shù)」を強(qiáng)調(diào)しすぎるところがあり、研究成果は「數(shù)で勝負(fù)」しなければならないと思っている。一部の中國(guó)人研究者が研究をするのは、成果を出し、論文を書(shū)くためであり、それで研究予算を申請(qǐng)するということを繰り返している。これに対して日本人の研究者は、本當(dāng)に好きだという理由で科學(xué)研究の道に入ったという人が多い?，F(xiàn)時(shí)點(diǎn)で、日本ではすでに25人（日本國(guó)籍に限る）のノーベル賞受賞者が生まれている。將來(lái)的には、中國(guó)人の學(xué)者の中にも受賞する人が出てくるに違いない。しかし、もし現(xiàn)在のような狀況がずっと続いていけば、中國(guó)が受賞者數(shù)で日本に追いつくのはたやすいことではないだろう。

中國(guó)の論文數(shù)はすでに世界でトップになっているが、より質(zhì)を重視した研究環(huán)境を作る必要がある。數(shù)を強(qiáng)調(diào)することは、必ずしもノーベル賞のような真のトップクラスの賞をもたらすわけではない。私の中國(guó)に対する理解では、中國(guó)が何かをしようとする場(chǎng)合、國(guó)を挙げて取り組めばうまくいく。中國(guó)が現(xiàn)在の研究環(huán)境を改善したいのであれば、それも問(wèn)題なくやり遂げることができると思う。（編集AK）

「人民網(wǎng)日本語(yǔ)版」2021年11月18日