「ノリで來てしまった」ため、中國のことはほとんど知らなかった。もちろん仕事のツテも一切なく、言葉もしゃべれない。自分を売り込んで仕事をしていくことを考える前に、生きていくことで精一杯だった。しかし、北京での生活を続けていると、思わぬ嬉しい誤算が次々と起こっていった。
――中國では日本の漫畫?アニメを好きな人が多くて、特に「ワンピース」がすごい人気だということぐらいは知っていましたが、まさか自分が関わってきた「AKB48」や「LoveLive!」といったコンテンツがこれほどまでに人気があるとは全く想像していませんでした。暮らしていく中で出會った人達(dá)の中から「AKB48の作曲家が北京に住んでいる」というような噂が広まっていき、あっという間に拡散されていったようです。
きっかけはAKB48のコスプレサークルの女の子と偶然出知り合ったことだった。中國ではコスプレが1つの大きな文化となっていて、プロのコスプレイヤーが當(dāng)たり前のように存在する。そんな中、最近は大學(xué)生や高校生の間でAKB48のコスプレをするサークルが流行っている。中には劇場を貸し切って「公演」(AKB48の公演を參考に既存の曲をカバーダンスをする)を行い、それを埋めてしまう程のファンが付いているサークルも少なくない。
そのうちの1つに所屬する女の子の微博(ウェイボー)の書き込みから、AKB48の「風(fēng)は吹いている」の作曲家が北京にいるという情報が広がっていった。そして、北京に住み始めて半年経つ頃にはアジアNo.1のIT企業(yè)「騰訊控股」や、中國のゲーム業(yè)界大手の「暢游」など、次々と仕事の依頼が來るようになった。
中國人が自分に興味を持ってくれるのは単純に嬉しいという河原さんだが、それでもあるゆずれないこだわりがあった。
――北京にはお金を儲けたり、地位や名譽(yù)が欲しくて來ているわけではないので、地元のミュージシャンにとって危険な外來種にはなりたくないんです。だから、中國人がやらないタイプの作品だったり、僕のスタイルに対してリスペクトがあるような意義のある仕事だけをちゃんとした単価で受けるようにしています。
例えば、「暢游」の新作ゲーム「幻想神域」では、「中國のゲームの主題歌を日本語で制作する」という畫期的なプロジェクトに攜わりました。これは中國のゲームで初の試みです。結(jié)果としてこの作品は幸先の良いスタートを切り、今年リリースされているゲームの中でも特に注目されました。その點(diǎn)で僕もプロモーションに貢獻(xiàn)出來たかなと思っています。今後も「中國のゲームの主題歌を日本語で制作する」ということが続いてくれたらこんなに嬉しいことはないです。
別の案件では騰訊控股が製作したアニメ「王牌御史」 のオープニング曲を手掛けたことも印象に殘っています。この作品は中國版ボーカロイドのデザインを擔(dān)當(dāng)した「ideolo」氏など中國でも個性の強(qiáng)いクリエイターたちが集まった企畫で、最初に公開された00話の反響は想像以上でした。
中國のアニメには「オープニング曲を作る」という概念があまりないのですが、これが當(dāng)たり前になれば現(xiàn)地のミュージシャンの仕事が増えるのではないかと思っています。そんな未來が待っていたら嬉しいですね。
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