海外研修制度に合格した向井さんは滯在先に中國(guó)を選んだ。以前仕事をしたことがある奧原浩志監(jiān)督が同じ制度を利用して北京に滯在していたことや、2年前に所屬する腳本家協(xié)會(huì)の交流活動(dòng)で北京に2週間程滯在したことがあることも関係しているそうだが、それ以外にも理由があった。

――以前は、アジアのことをよく知りませんでした。でも、日本ではここ數(shù)年でどんどんアジアからの移民が増え、新宿などでもコンビニに行けば、中國(guó)人がレジ打ちをしているという光景をよく見かけるようになりました。こういう人たちは、日本に來(lái)る前にいったいどんな生活をして、どんなことを考えていたんだろうか、という好奇心もありました。それに、今後、アジアや中國(guó)の人を描くことがあるかもしれないと思ったのもあります。

あと、直接的なきっかけは、2年前に初めて北京に來(lái)た時(shí)、ドアや仕切りのないニイハオトイレで、若い男の子が排泄しながら、スマホをいじっている姿を見て、中國(guó)って面白いなと思ったことかもしれません。

僕は隣にいるような面白い、変わった人に興味があるんです。自分にないような不可解な人に妙に惹かれる。そして、なんとか理解したいと思う。それは、きっと変わっていると思う人に向ける自分のリアクションや反応がすなわち自分自身の投射だからです。それが自分に跳ね返ってきて、自分自身を知ることになる。そういう意味では、中國(guó)に來(lái)たのも、外から自分や日本を客観視したかったというのがあるかもしれないです。

この客観視するという行為は、腳本家にとって非常に大事なことだと向井さんは語(yǔ)る。

――腳本の作業(yè)って、常に初稿を書くときはのめりこんで書くんですよ。要は自分は天才だと、こんなおもしろいものはないと思いながら書く。でも第2稿の時(shí)に、読んだものを一回絶望しないと駄目なんです。あぁ、こんなひとりよがりの本なんて駄目だと。その時(shí)に、直せる力があるかどうかが大事なんです。よく言われることなんですけど、書くことは誰(shuí)でもできる。自分が書いたものに手を加えることができるライターが1番いいライターだと。

その際に大事なことは客観視するということです?？陀Q視とは、言葉を変えると、自分を疑うことです。例えば自分から出たアイデアを、自分が面白いと思っているだけで周りの人はどう思っているかわからない、というふうに自分を疑うことが大事なんです。

ほかにも、戀人と別れ話をする時(shí)に、今別れ話をしている自分がいるんだと思っている自分がいる。こういうことを言うと、こういうふうに泣くんだとか。こういうことを言われると、こんな気持ちになるんだとか。どこかで分析する自分がいる。あるいは、身內(nèi)が亡くなった非常に悲しい時(shí)でも、どこか冷めている自分がいる。

こういう視點(diǎn)って絶対に必要だし、そこを失くすと、腳本家としてだけでなく、人間としても視野が狹くなって駄目になってしまう気がするんですよね。生きていることと、腳本を書くことって似ているなと思います。

ただ他人の評(píng)価とか自分を疑うとか言ってられないような、一心不亂にならないと駄目な時(shí)もある。だから、そのバランスの取り方をうまくやりたいなと思っています。それが、腳本を書く秘訣のような気がします。