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尺八に今の時代の息吹を吹き込む 尺八奏者の黒田鈴尊さん

人民網(wǎng)日本語版 2019年06月24日09:54

黒田鈴尊さん

尺八奏者の黒田鈴尊さんが6月上旬に中國を訪問し、北京、蘇州、青島で講義や公演を行った。黒田さんは日本の文化庁から2019年度文化交流使に指名されており、今回の中國訪問も文化交流使の活動の一環(huán)として行われた。各地で行われた講義と公演では、尺八の獨奏のほかにも、簫や古箏など中國の伝統(tǒng)楽器や電子音楽とのコラボレーションも実現(xiàn)した。人民網(wǎng)は6月12日、中國公演を終えたばかりの黒田さんにインタビューを行った。黒田さんは、尺八との出會い、西洋楽器と伝統(tǒng)楽器の違い、伝統(tǒng)楽器の継承者問題、電子音楽や中國の伝統(tǒng)楽器とのコラボレーション、中國での尺八教授活動などについて語った。またインタービューの前に、尺八の伝統(tǒng)曲「奧州薩慈(おうしゅうさし)」(抜粋)の演奏を披露した。人民網(wǎng)が伝えた。

人生をやり直す思いで始めた尺八

尺八は一本の竹から作り出されるシンプルな管楽器。しかしその音は実に多彩だ。時に物悲しく、時に力強く、時にかすれ、時に振るえ、時に長く伸び、時に長く沈黙して、聴く者の心を震わせる。袴姿の凜としたたたずまいで尺八を演奏する黒田鈴尊さんは、幼い頃から尺八の道をまい進してきたように見える。しかし、黒田さんと尺八との出會いは意外にも遅く、大學時代だったという。

「20歳の夏休みにCDで武満徹作曲の『ノヴェンバー?ステップス』という曲を聴いて、今まで味わったことがない、ものすごい感動を味わった」と黒田さんは當時の衝撃を振り返る。その時初めて聴いた尺八が黒田さんの人生を変えた。幼少期からピアノを習っていたが、「その曲を演奏したい一心で、人生をやり直す感じで」尺八に転向。人間國寶?二代青木鈴慕、三代青木鈴慕各氏に師事し、プロになることを目指して尺八の道を歩み始めた。その後東京蕓術(shù)大學音楽科に進み、同大學修士課程を修了。尺八奏者として多彩な活動を続けており、2018年にはロンドンで開かれた國際尺八コンクールで優(yōu)勝した。

「ノヴェンバー?ステップス」を演奏するという夢は、2016 年にベルギーでかなうことになった。2016年の國際現(xiàn)代音楽祭「アルスムジカ」にコンチェルトのソリストとして招請され、「ノヴェンバー?ステップス」を演奏したのだ。尺八奏者として「やり直した人生」は大きく花開いた。

西洋楽器であるピアノから日本の伝統(tǒng)楽器である尺八への転向は、確かに「やり直し」という言葉にふさわしい大きな変化だ。違いに戸惑うことはなかったのだろうか。ましてや、初心者には音を出すことすら難しいと言われる尺八である。黒田さんは、尺八を習うには「気や呼吸、姿勢など、音楽ではない側(cè)面の修練もすごく大きい。西洋音楽はほとんど作曲者が分かっていて、作曲者の指示があるが、尺八の曲は作曲者が分からないような曲がほとんど。だから、尺八は音楽以外のもっと根底にあるもの、なぜその音を出すのか、なぜその音をどのくらいの強さで、どのくらいの長さで吹くのか、ということを自分で考えないといけない」と語った。師匠と一緒に吹き、師匠の真似をすることから始め、真似しながら習得し、自分で試行錯誤していったという。

黒田さんは公演でよく「奧州薩慈(おうしゅうさし)」という曲を演奏する。「産安(ういあん)」、「神保三谷」とも呼ばれる東北地方に伝わる尺八の伝統(tǒng)的な楽曲で、物悲しさを感じさせる獨特な節(jié)がある。黒田さんによると、この曲は哀切極まる曲調(diào)であるため、遊郭で男女が橫死してしまう事件が増え、江戸時代に吉原で演奏することを禁じられていたという。自身は日々を楽しく幸せに過ごしているという黒田さんだが、「この曲を吹くと、『生きているだけで悲しい』という気持ちが実感できる。だからとても大切に思って、この曲を一生修行と思って吹いている」と語った。

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